1. 〔第4回〕DtoD救命救急塾 ~後編~

太田祥一の救命救急入門

連載 太田祥一の救命救急入門

〔第4回〕 DtoD救命救急塾 ~後編~

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第4回では、DtoD救命救急塾の後半部分、スポンサードセミナー、ICUな回診について振り返ります。

5. スポンサードセミナー『ICUにおける災害対応』
【講師】 児玉 貴光(The University of Texas Southwestern Medicine, Department of Surgery)
【共催】 レールダル メディカル ジャパン株式会社

災害対応については、DMAT講習をはじめとして、英国のMIMMS、集団災害医学会のMCLS、アメリカ医師会のNDLS等、様々な教育コースが行なわれるようになってきました。DMATの講習はMIMMSを参考にしており、そこでは災害急性期の対応として、CSCATTTが強調されています。

NDLS(BDLS、ADLS)ではDISASTERと、災害対応に切り替える(Ditection)、指揮命令系統を確認し連絡調整(Incident management)、危険を評価し安全を確保する(Safety, Assess hazard)、情報収集・伝達、評価・支援(support)、トリアージ、治療(TR)、搬送(Evacuation)、回復・復興(Recovery)とほぼ同じことが言われています。

C command and control 指揮命令系統
S safety 安全
C communication 情報伝達
A assessment 評価
T triage トリアージ
T treatment 治療
T transport 搬送

これらの教育はいずれも現場からERまでの内容が多いなかで、米国集中治療医学会(SCCM)では災害時の集中治療に関してFDM(Fundamental Disaster Management)というコースがあります。これは、災害時に発生する重症に対応できるように、集中治療室のマネージメント、集中治療医の対応を中心に、災害時に病院内、特にICUでどのような医療を提供するか、という内容がメインだそうです。

5. ICUな回診
【講師】 則末 泰博(東京ベイ・浦安市川医療センター)、藤谷 茂樹(東京ベイ・浦安市川医療センター)

則末先生は、内科・呼吸器米国専門医、集中治療米国専門医、藤谷先生は内科・集中治療・感染症米国専門医を今年取得予定だそうです。わが国では集中治療は救急か麻酔科が担当することが多いように思います。お二人にはICUで日々どのような回診をしているか紹介していただきました。

【プレゼンテーション】
回診前に30秒間で患者をじっと見て、どんな患者か、急いで介入する必要があるか、を判断します。ついで、酸素飽和度 、動脈圧、心機能モニター、膀胱留置カテーテルがどうか?蘇生に関しては、気管挿管チューブ、中心静脈or末梢ライン2本+ブラッドアクセス、投与されている薬剤を確認します。
実際は以下の順で行います。

  • ・ 回診の導入部(現病歴または過去24時間のイベント)
  • ・ バイタルサイン
  • ・ 身体所見
  • ・ 検査値
  • ・ 画像その他のデータ
  • ・ Active medications
  • ・ SOFA score
  • ・ システムごとにアセスメントとプラン
  • ・ 予防
  • ・ ライン類
  • ・ 経口薬への切り替え
  • ・ Disposition
  • ・ 今日することのおさらい

まずSOFAスコアで重症度分類をしています。このスコア > 4 で 死亡率20%以上、> 16 で90%以上とされています。

SOFAスコア
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また、患者の状態をシステム(中枢神経、循環、呼吸、消化器、腎・電解質・泌尿器、血液、感染、内分泌)ベースでアセスメントし、line、disposition等、今日すべきことをプランし、漏れなく全身管理していることがとてもわかりやすいと思います。中枢神経ではICUでは鎮静されていることも多いので、一般的な意識レベルGCSだけでなく、RASSでも評価しています。 システムベースで系統的に考えるというのは、全身管理上非常に有用だと思います。臓器別診療でない診療科での特徴でしょう。
救急では外傷でのJATECから、内科救急のJMECCまで、ABCDEによる診療手順が定着してきています。これを応用して、私たちはさらにINRTを加え、ABCDEINRTアプローチで系統的に管理、プレゼンテーションしています。

RIFLE分類
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A:気道、B:呼吸、C:循環、D:意識、E:体温、体表ですが、それぞれには評価とともに今後の展望も含まれます。Aの確保は、A自体の問題だけでなく、B、C、Dの問題でも必要になります。いずれかが回復しなければ気管挿管から気管切開が必要となり、これも遅れるとVAPとなり、BやE、I、さらにRの問題に広がっていきます。AとBが混乱することもあるかもしれませんが、このように分けて考えると理解しやすいと思います。Cについても、出血の問題であれば、C自体の問題として、止血法、各種モニター、IVC測定等が関連して含まれてきますし、その出血が大量になれば、輸血やDICに対する注意が必要です。また、ショックでは尿量、尿比重等腎機能とも密接に関係します。必要尿量は体重時間当たり最低0.5mlですが、これはRIFLE分類でもいわれています。

■ 第1回DtoD救命救急塾の成果
受講者の皆様はとても熱心で真剣にディスカッションに参加されていました。終了後のアンケートでは、「普段、直接救急の現場に関わらない立場ですが、大変勉強になりました」(クリニック勤務医)、「将来は救命救急以外を志望していても、患者の急変や災害対応を考えると必要だと思います」(研修医)といった感想をいただきました。

第2回となる今年は10月26日土曜日、東京都内での開催を予定しています。
パワーアップして開催したいと思いますので、内容に希望があればどしどしお寄せください。