1. 〔第1回〕自身(太田祥一)の仕事場紹介と大学卒業からを振り返って

太田祥一の救命救急入門

連載 太田祥一の救命救急入門

〔第1回〕 自身(太田祥一)の仕事場紹介と大学卒業からを振り返って

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今回から連載を始めることになりました、東京医科大学救急医学講座太田です。よろしくお願いします。
今回はまず第1回なので、最初に私の仕事場を紹介します。

東京医科大学救急医学講座…

東京医科大学には大都市型3次救急の新宿、郊外型(ER併設)の八王子の2カ所の救命救急センターがあります。ともに3次救急搬送件数は多く、豊富な臨床経験ができるのはもちろんですが、院内救急対応(Rapid Response System)、Acute Care Surgery、地域連携等々、病院や地域の求めに応じた特徴があります。また、いずれも災害拠点中核病院、DMAT指定病院であり、災害対応にも力を入れています。

救急医学講座は2000年1月に開設され、初代 行岡哲男主任教授が着任しました。大学の特徴として、研究、教育にも早くから関わります。各々の興味に沿って、後期研修医からいろいろなテーマに取り組んでいます。研究のための研究ではないので、研究や教育に取り組むことによって、臨床能力がさらに磨かれます。ここで、我々が取り組んでいるある研究をご紹介しましょう。研究には動機、つまり問いがあります。この研究は、チーム医療のメカニズムを人の動きや会話から解析できないか?という問いから始まりました。そのために、チーム医療の評価、人の動きやコミュニケーションの可視化を行い、「納得を共有する医療」の実現を目指しています。工学分野では、ステレオカメラで集積した動線や動作のデータをもとに、画像認識技術で人の動きを解析、社会学では、コミュニケーションのあり方とそこに見られる規範を分析する会話分析を行っています。多分野が協調して行う大きなプロジェクトです。研修医教育、シミュレーション教育、災害時のトリアージ、ER設計、チーム医療等々に非常にユニークな研究成果が出てきています(http://eccm.tokyo-med.ac.jp/)。

このような環境のなかで、我々は、時代にあったセンスと人柄を備えたバランスのとれた救急医を数多く生み出すことを第一にしています。女性救急医が多く、多様性のある働き方にも取り組んでいます。

大学卒業から…

さて、ここで、自己紹介として、大学卒業からを振り返ってみます。
私は東京医科大学を卒業してすぐ救命救急部で研修を始めました。当時の救急医の先輩の多くは外科系で、内科系は循環器と混成チームで診療していました。当時の研修は最初の1年は救急部でその後の2年で他科研修をすることになっていました。私は外科にも興味がありましたが、それまでの救急医療に比べて、時代的に高齢化が始まっていたのでしょう、それによる内因性救急が増加傾向にあったので、内科系を研修することにしました。具体的な研修先は、内科系のなかでも、救命救急センターでも活用でき、外科系の同僚を補完できるもの、将来的にも軸になるもの、と考えて、画像診断(IVR)、消化器、循環器を研修しました。その後、3次救急、集中治療を長く経験しました。その他、有床診療所や2次救急病院等でプライマリケアや在宅医療を、そして、いくつか救急部門の立ち上げに関わりました。

どうして救急を始めたのですか、という質問には、(1)上司の影響、(2)ホットラインが鳴るとわくわくした、(3)夜の病院(当直)が好き、と答えてきたように思います。宴会では救急や当直にまつわる替え歌をよく歌ってきました。これはまたの機会に紹介しましょう。
以前から救命処置教育、緊急医療電話相談などで一般の方々にも救急医学、医療を知っていただこうとしてきましたが、最近は、地域では、災害医療、地域連携に、学会や病院では、広報、他職種連携、教育、JTAS、ER、RRS等に関わっています。『本物の医療者とは何か』(へるす出版)の執筆以来、プロフェッショナルにこだわるようになり、医師だけでなく他職種の多くの医療従事者の皆さんへもっと救急を知っていただけるように、救急塾(http://kyuukyuujyuku.jp/)や、救急超入門等をはじめとした、時代にあった、さらにこれからを見据えたより楽しく効果的な教育の普及やその研究を始めました。

これから救命救急について連載をしていきますが、救急のキーワードは、チーム、時間軸、瞬時、判断、繰り返し、最大の成果、あたりにあるのでしょうか?このためには、いのちにとことんこだわること、人とのつながりを大事にすること、だと思います。醍醐味はこれに尽きるのではないでしょうか。

最近面白かった映画 : 『のぼうの城』
人と人との関わり、リーダーシップとは、等々考えさせられました。『ディア・ドクター』以来の素晴らしい映画だと思います。
最近面白かった本 : 『医療とは何か』
河出書房新書 言わずもがな…。