1. 「地域への配達」ノウハウいかす!宅配業者が見守る独居高齢者の暮らし

「地域への配達」ノウハウいかす!宅配業者が見守る独居高齢者の暮らし

ヤマト運輸、地域高齢者の“緩やかな見守り”

地域で暮らす高齢者の見守りにつなげようと、企業と自治体の連携が広がっています。物流大手の「ヤマト運輸」(東京都中央区)は、全国各地の自治体や企業と連携して「プロジェクトG(government)」と呼ばれる地域活性化の取り組みを進めています。最近では、「高齢者等を支える地域づくり協定」を東京都と締結し、同社のセールスドライバーが業務中、独居高齢者の異変に気付いたら警察や消防などの関係行政機関に連絡するなど、本業の宅急便を通じて地域の安心に寄与する動きを進めます。

[図1]東京都の人口推移(将来推計)[図1]東京都の人口推移(将来推計)
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都では、高齢者らに対する「緩やかな見守り」の実施に関する協定を今年3月、コンビニ各社やタクシー会社など19の企業・団体と交わしました。ヤマト運輸との協定締結はこれに続く第2弾という位置付けで、同社を含め計7社ほどと近く協定を交わすことにしています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計などによると、都内では、総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合(高齢化率)が2010年の20.4%から、2040年には33.5%を占めるとみられます(図1)。これは世界にも前例のない急激な高齢化で、これによって高齢者の一人暮らしが増えるのは確実です。

都による高齢者の在宅支援はこれまで、地域包括支援センターなどを中心に展開されてきましたが、専門職だけでは見守りが行き届かないこともあるといいます。都福祉保健局・在宅支援課の担当者は、「事業者の皆さんにも協力を仰ぎながら、認知症の方を含む高齢者への“緩やかな見守り”を広げたい」と話しています。

一方、ヤマト運輸側は今回の協定を受けて、都や各区市町村が実施する高齢者施策や地域支援活動などに協力します。また、社員が「認知症サポーター養成講座」を積極的に受講して正しい知識を身に付け、認知症の高齢者や家族を支援します。同社では、「相互の連携をさらに強化し、地域の課題解決や活性化を図りたい」としています。

お年寄りの孤独死なくせ

[図2]買い物サポート[図2]買い物サポート
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ヤマト運輸が各地の自治体と連携しながら展開するプロジェクトGは、「見守りサポート」など地域住民の生活支援と、地域活性化の支援(産物販売サポート)に分けられます。
これらの地域連携の先駆けとも言えるサービスが、買い物サポートと見守りを合わせた「まごころ宅急便」です。岩手県西和賀町で2010年9月に始まりました。このサービスは、社会福祉協議会が利用者から買い物の注文を取りまとめ、注文情報を地元スーパーに伝えて当日中に集荷・配達するというものです。配達の際には高齢者の健康状態などを確認し、社会福祉協議会に報告します(図2)。

まごころ宅急便が始まったきっかけは、岩手県内に勤務する女性スタッフの悲しい経験でした。2008年の春、地域に一人で住んでいる馴染みの高齢者に荷物を届けると、その日に限って「そこに置いといて」と声を掛けられました。
「いつもなら顔を出すのに」と違和感を抱きながらもそのまま業務を続けましたが、それから3日後、この方が自宅で孤独死しているのがみつかりました。
「こんな思いはもう二度としたくない」と、この女性スタッフは地域に深く関わる本業をいかしてお年寄りの生活支援につなげられないかと模索を続けました。この試みはやがて、地域の大学や商店街、自治体を巻き込んだ取り組みに発展し、「まごころ宅急便」が誕生しました。

ヤマト運輸では今年6月現在、全国100以上の自治体と見守りや買い物サポートの協定を交わし、異常をいち早く察知し、対応できたケースもこれまでにありました。ヤマト運輸は全国に集配の拠点を持ち、セールスドライバーのネットワークを築いています。同社では、これをいかして自治体との連携を今後も積極的に展開することにしています。

ヤクルトは「愛の訪問活動」で地域の高齢者を支える

一方、乳製品宅配事業の「ヤクルト」(東京都港区)ではCSR(企業の社会的責任)の一環として、「愛の訪問活動」を1972年から展開しています。
全国で活躍するヤクルトレディーは3万6000人を超え、乳製品の宅配を通じて地域社会に深く関わっています。こうしたネットワークをいかし、一人暮らしの高齢者を見守ったり、話し相手になったりしています。

この活動は、福島県郡山市内に当時、勤務していたヤクルトレディーが、孤独死した高齢者の話に胸を痛め、担当地域に暮らしている一人暮らしの高齢者に自費で自社製品「ヤクルト」を届けたのが始まりで、ほかの企業や団体、自治体を巻き込んだ活動に発展しました。2015年3月現在、全国の142の自治体と見守り支援の協定を結んでいます。

日本国内ではこれから、都内だけでなく特に都市部で急激に高齢化が進行します。しかし、介護・福祉資源はすでに足りておらず、一人暮らしの高齢者までカバーするのは難しい状況です。こうしたなかで、企業と自治体の連携は、地域で暮らす高齢者の生活を支えるのに不可欠な取り組みになりそうです。

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