1. 医療現場に活用!日本企業の優れたものづくり技術

我が国の連携のカタチ 医療現場に活用!日本企業の優れたものづくり技術

医療の進歩には優れた医療機器が不可欠

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    こんな手術器具があれば、患者さんの体への負担が軽減するのではないか・・・。

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    医療現場で本当に困っていることはなんだろう?
    僕たちが培ってきた技術を医療に活かせないだろうか…。

診療や手術の場では医療者がこうしたさまざまなアイデアを思いつく機会はたくさんあります。しかし医療者は医療の知識やアイデアはあっても、ものづくりにおいては素人。技術を持ち合わせていないため自分たちでは作ることができず、実現しないままになってしまうことがほとんどでしょう。
逆に機器の作り手である技術者は医療に関する知識は乏しく、医療現場のニーズは伝わってこないというのが現実で、優れた医療機器を作り出すには「医」「工」の連携が欠かせません。

成功例もあるものの、つながりにくい「医療ニーズ」と「技術」

医療機器は海外から入って来るイメージが強いですが、日本にも医工連携のモデルとなる企業は存在します。長野県岡谷市に本社を置く企業、リバーセイコーもその一つ。昭和56年の設立以来、内視鏡治療に使う器具を中心に医療器具の開発や製造を手掛け、国内外で高い評価を得てきました。

なかでもクワガタの角のような形をした刃渡り2mmの極小のハサミは、同社のものづくりの技術を結集して完成させた製品。「手術時の患者さんの体への負担を少なくしたい」という医療現場のニーズをもとに、大腸内視鏡に装着して大腸内に挿入し、腫瘍を切り取る医療器具(処置具)として開発されました。現場で治療に携わる医師との共同開発が同社の得意とするスタイルで、医師の意見がふんだんに取り入れられ、使いやすいように数々の工夫が凝らされています。

一方、光学機器メーカーのスカラ(本社・東京都新宿区)は、15年がかりでプラスチック製の特殊レンズを用いた「世界一細い手術用内視鏡」を開発。2015年には和歌山県立医科大学の協力を得て脊椎手術用の試作品を作製し、実用化に向けて動き出しています。

しかしこれまでこうした医工連携が行われたケースは少なく、中小企業の持つ優れたものづくりの技術はほとんど医療現場では活用されていない、というのが現状でした。その背景にあるのは、医療機器特有の事情。他の電子機器などと違って安全性を担保する観点から製品販売について国の認可を得なければならないことや、人命に直接関わるために製造責任が重く、中小企業にとって参入リスクが高いことなどが障壁になってきました。それ以上に、これまで医療現場とものづくりの現場をつなぐ機会がほとんどなかったことが、医工連携が進まなかった大きな理由と言えるでしょう。

政府や自治体、大学などが医工連携を後押し

「医工連携事業化推進事業」実証事業フレームワーク「医工連携事業化推進事業」実証事業フレームワーク
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しかし近年、こうした状況は大きく変わってきています。政府は日本経済再生に向けた成長戦略の柱として医療分野におけるイノベーションの推進を打ち出し、2014年3月、経済産業省主導で「医工連携事業化推進事業」がスタートしました。

同10月には、同省が中心となって、医工連携のスキームを初期段階から事業化に至るまで切れ目なく支援する「医療機器開発支援ネットワーク(MEDIC)」が発足。人工関節、カテーテル、ステントなど、中小企業やベンチャーが取り組みやすく、比較的短時間に事業化しやすいものを重点的に支援し、機器メーカーだけではなく、薬品メーカー、再生医療、メガバンクなどがしっかりチームを組んで進めていけるよう、“伴走コンサル”として、医療機関と企業との最適なマッチングや市場性の開拓などを行っています(右図)。

これを受けて、自治体でも関連産業の集積を目指す動きが相次ぎ、東京都では大田区などが地元の病院と企業、工場などとの医工連携を支援。青森県や静岡県など多くの自治体が、同じように支援に動いています。

さらに大学主導で医工連携に取り組むケースも出てきました。信州大学の医学部が進めている医工連携のモデルでは、医療者から機器などのニーズ(アイデア)を吸い上げて、地元を中心にした企業の技術シーズとのマッチングを実施。その後、医療者と企業が共同で開発を行い、臨床研究や治験、薬事申請、さらに販売までを、知的財産活用センターのスタッフが全面的にサポートするシステムを構築しています。
こうした動きは全国に広がり、さまざまなスタイルで医工連携を進める大学が増えています。

しかしシステムは整えられても、現実問題として多忙な医療の現場で働く医療者側がどこまで機器の開発にかかわれるのか、研究マインドをもった次世代医療人材の養成など、さまざまな課題も残されています。一時的な支援で終わるのではなく、軌道修正を加えながら支え続けていくことが求められています。

【出典】MEDIC(実証事業のフレームワーク)

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