医学書著者インタビュー『その患者さん、リハ必要ですよ!!病棟で、外来で、今すぐ役立つ!評価・オーダー・運動療法、実践リハビリテーションのコツ』

〔Vol.07〕医学書著者インタビュー 『その患者さん、リハ必要ですよ!!』 若林 秀隆 ~生活を支える視点とQOLを大事にするドクター~

今回紹介する書籍は『その患者さん、リハ必要ですよ!!』です。

本書の編集者は、横浜市立大学付属市民総合医療センター、リハビリテーション科の若林秀隆(わかばやし ひでたか)さん。同センターでリハビリテーション(以下、リハ)に従事しながら、学会に積極的に出向き、講演ではリハの大切さを伝える活動をしています。

リハについて常日頃訴えていることや、専門としているリハビリテーション栄養、サルコペニアについても詳しく伺いました。

本書は、レジデントノート(羊土社)の連載記事「ちょっと待った!その患者さん、リハ必要ですよ」が元になっていますが、この連載を始めたきっかけは?

羊土社さんから、リハに関する記事の連載をしたいという依頼があり、2014年12月号から翌年5月号まで6回連載しました。この記事を全面的に刷新して、大幅に新規項目を加えたものが本書です。

レジデントノートで連載したものは、本書の第3章、疾患別のリハについて記載した章の一部になっています。その他のページはすべて新たに作成したもので、編集にあたっては、岡田唯男(おかだ ただお)先生(鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山)と北西史直(きたにし ふみなお)先生(トータルファミリーケア北西医院)のご協力をいただきました。

お二人とのつながりは?

私はリハ医ではありますが、プライマリ・ケアの学会や家庭医療の学会、研修会に参加していて、家庭医の方たちがリハの必要性を理解しているか、また行いたいと考えているかなどの研究をしていました。その過程でお二人にもご協力をいただき、連絡を取り合うようになり、今回の編集作業もお手伝いいただいたのです。

家庭医の方々も執筆をされているというのが、本書の特徴的なところですね。

そうですね。本書はリハの必要性を訴えるものですが、リハ医向けではなく、家庭医や総合診療を行う医師を対象にしているものです。

リハが大事だということはみなさん理解されているとは思うのですが、自分がどうリハに関わればいいのか、どう診察してオーダーを出せばいいのかが曖昧で、自信がないままリハ科に回していたのではないかと…。

家庭医の方々にインタビューした時も、リハが「大事ではない」と思っている方はひとりもいませんでした。でもプライマリ・ケアや家庭医にとって必要なリハを体系的に教えられる人は、ほとんど誰もいなかった状況だと思ったのです。

本書を読んでもらいたいというターゲットも、そこに絞られていますか?

もともとレジデントノートの連載なので、初期研修医にはもちろん読んでいただきたいのですが、その他、家庭医、総合診療科や内科の医師がターゲットになっています。また、クリニックを開設されている、かかりつけ医の方々にもぜひ手に取ってもらいたいです。

本書に挙げているような疾患を診る機会が多いにもかかわらず、どうやって運動指導すればいいのか、リハが必要かどうかという見方を、体系的に習う機会がたぶんなかったのではないかと思いますので、本書を参考にして学んでもらいたいと思います。

各章の内容について、簡単に説明をお願いします。

第1章では、なぜリハが必要なのか、ということに主眼を置いて、日本プライマリ・ケア連合学会の丸山泉(まるやまいずみ)理事長を始めとする数名の先生方に執筆いただきました。

第2章は、リハが必要かどうかの判断をした後に、どのようにオーダーを出せばいいのか、最低限のリハオーダーの出し方についての知識を紹介しています。

第3章と第4章は、疾患別のリハに関する情報を掲載していますが、前者は入院患者に多い疾患、後者は外来患者によく見られる疾患を挙げています。

第5章は、家庭医や総合診療医と、リハの親和性についてです。

全体を通して、リハの“Why”“What”“How”の並びになっていて、なぜリハが必要で、何がリハで、どのようにリハを進めればいいのか、という流れで構成されています。

出版後の評判はいかがですか?

リハ医学会や日本プライマリ・ケア連合学会での販売も好調だったという報告をいただき、また「今までにない書籍」という評判が数多く届いています。

そもそも、リハ科に進もうと思われたきっかけは何だったのですか?

学生時代に受けた授業がほとんど臓器別の診療科で、人を診るというよりも臓器を診て臓器を治すというものが多かったのです。医師になるには当然のことかもしれませんが、患者さんの全体を診察する、心理面や社会面も含めた全人的に診るということを、体系的に行っている科は、私が受けた中ではリハ科しかなかったのです。

リハの進め方について問題意識を持ち、ブログやSNSで情報発信を続けていますね?

急性期病院でのリハにおける一番の問題は、ほとんどの病院では主治医がリハ科に併診するというリハオーダーを出さないと、リハが開始できないということです。

薬については処方箋を出さないといけない、栄養については食事箋を書かないといけない、というのと同じように、主治医がリハの必要性を理解して、オーダーを出さないと始まらないのです。

リハが必要な患者さんに対して、1週間、2週間、3週間とずっと疾患の治療だけに専念して、治療が終わった時にはすっかり寝たきりになったり、嚥下障害を起こしたりしていることが少なくないのです。それをなんとかしたいという想いがずっとありました。

リハ医として、リハ栄養の情報発信を積極的に行っていますが、これはどんな理由からですか?

リハ栄養という言葉は、私がつくったものです。リハから見た栄養と、栄養から見たリハの両方を考えて、目の前の患者さんが最高のパフォーマンスを発揮できるようなリハと栄養管理をしようという考えです。

その発想に至った経緯は?

15年くらい前の話になりますが、リハを頑張っていた脳卒中の患者さんが、ずさんな栄養管理のせいで健康状態を悪化させてしまったケースがありました。それまでは、リハの視点だけでリハのことを考えて、PT、OT、ST、また看護師たちと仕事をしていたのですが、栄養管理の視点を持たずにリハを進めたせいで、患者さんの栄養状態を悪くしてしまうことが少なからずあったのです。

そこで、リハは大事だけれどもリハだけやっていてもダメで、主治医の栄養管理だけに任せられないケースは確かに存在します。なので、リハからも栄養管理を同時に行わないといけないという考えから、リハ栄養の大切さを訴えるようになりました。

サルコペニアについても同じような考えで?

もともとリハの世界では廃用症候群という概念があって、それまでADLができていた人が入院して寝たきりになってしまうようなことを指します。それも最初は、リハの視点でしか見ていなかったのです。

入院して動かないのが問題だとすれば、リハを頑張ればいいと思っていたのですが、どうもそうではないと。自分で研究してみると廃用症候群の方の88%が低栄養で、低栄養のせいでADLが下がっているという見方ができるようになり、人が寝たきりになってしまう理由は、安静だけではなく、低栄養と疾患の3つであることに気づいたのです。

疾患については主治医が治療を施しますが、リハと栄養がどちらも足りていないのが今の医療の現状だと考えました。すると、加齢、活動、栄養、疾患の4つが原因とされるサルコペニアが、廃用症候群のモデルを理解するためにちょうどよかったのです。

その中でも、医原性サルコペニアとは?

医原性サルコペニアは、リハが必要だったり、離床ができるような人たちを、治療上、本当は必要がないのにベッド上で安静を続けたり、食べられるのに禁食にしたりした結果、衰えてしまうこと、それを医原性サルコペニアと呼んでいます。

早くリハを始めて、早く栄養を管理していれば済むだけなのに、医師や看護師がよかれと思ってベッド上の安静にしたり、禁食にしたりしているのです。それがリスクとなり害につながっているという自覚がないまま医療が行われています。

最後に、この記事を読んだ方に向けて、編集者としてメッセージをお願いします。

入院であれば、入院と同時に原則としてリハオーダーを全例行って欲しいと思います。リハが必要ないというのがデフォルトになっていて、何かあったらオーダーをしようという考えだと思います。そうではなくて、食事箋を出すのと同じように、リハオーダーを出すことをデフォルトにして欲しいのです。

後になってリハが必要だった、では手遅れです。病院が医原性サルコペニアをつくり出している面が大きいので、ぜひ本書を参考にしていただき、原則的にリハオーダーを出すということをデフォルトにしていただきたいと思います。

編集協力を行った岡田先生より一言

編集協力をさせて頂いた 岡田唯男(おかだ ただお)です。

この本の価値については、日本プライマリ・ケア連合学会の副理事長 草場鉄周(くさば てっしゅう)先生の推薦文が全てを物語っています。

あとがきにも書いたのですが、若林先生との共同研究がきっかけで、家庭医、総合診療医にとってはリハビリテーションの重要性があるにもかかわらず、研修体系や教科書の不足を認識することとなり、その結果がこの本という形になりました。

この本のおすすめポイントは
*非リハビリテーション専門医(家庭医、総合診療医、初期研修医など)向けにリハビリテーションの基本的な内容がまとめられている
*疾患、病態ごとの各論(入院、外来両方)はもちろん、リハビリをオーダーする際の考え方、注意点、基礎知識などの総論もカバーするにとどまらず、さらには、なぜリハビリが総合的に患者を診療する観点から不可欠なのか、ジェネラリズムとどのように共通しているのかなどの哲学的、精神的総論までカバーしている
という2点に集約されると思います。

羊土社の書籍紹介ページより、一部中身を立ち読みすることが出来ます。
ぜひ、近隣の医学書店などで実際に手にとってみられることをおすすめします。

岡田唯男 医療法人鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 院長
プロフィール
岡田唯男(おかだ ただお)
医療法人鉄蕉会
亀田ファミリークリニック館山 院長

取材対象者:若林 秀隆 様
取材場所:公立大学法人 横浜市立大学付属 市民総合医療センター
取材日時:2016年11月29日

紹介書籍:その患者さん、リハ必要ですよ!!
病棟で、外来で、今すぐ役立つ!評価・オーダー・運動療法、実践リハビリテーションのコツ
編集:若林 秀隆
編集協力:岡田 唯男、北西 史直
発行所:羊土社
発行日:2016年6月25日

編者プロフィール若林 秀隆(わかばやし ひでたか)
神奈川県出身。1995年に横浜市立大学医学部を卒業し、同大学のリハビリテーション科医局に。2016年東京慈恵会医科大学大学院臨床疫学研究室卒業。現在は横浜市立大学付属市民総合医療センターリハビリテーション科。趣味は旅行。ほとんどが学会や講義がらみの旅になっているが、その土地を巡るのは楽しみ。

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