医学書著者インタビュー「ジェネラリスト教育コンソーシアム vol.9 日本の高価値医療 High Value Care in Japan」

〔Vol.03〕医学書著者インタビュー 「ジェネラリスト教育コンソーシアム vol.9 日本の高価値医療 High Value Care in Japan」 徳田 安春 ~「闘魂」で総合診療に挑む~

今回紹介する書籍は『ジェネラリスト教育コンソーシアム vol.9 日本の高価値医療 High Value Care in Japan』です。

『ジェネラリスト教育コンソーシアム(Japanese Consortium for General Medicine Teachers)』は、ジェネラリストを目指す人たちを育てるTeachersの会として設立され、研究会の内容をまとめた書籍が9冊発刊されています。

本書のvol.9の編集を担当されたのは、総合診療医学教育研究所CEOの徳田安春さん。今回で3冊目の編集となりましたが、編集方針や日本の総合診療の現状、また先生の活動について伺ってみました。

ジェネラリスト教育コンソーシアムは、どういう経緯で結成されたのですか?

欧米では多くのフォーラムなど、指導医が勉強する環境が整っています。それをコンソーシアムという形で日本でも作ろうという考えで結成されました。年に2回集まって、それぞれの参加者が重要だと考えたテーマを出し合い、ディスカッションを行います。

本書は、そのテーマに対しさまざまな切り口で議論した内容や寄稿を本として出すシリーズで、今回紹介してもらうvol.9は私が編集を担当しました。

本書以前にも2回、編集を担当されていると伺いました。

vol.2の『提言―日本のポリファーマシー』と、vol.5の『Choosing Wisely in Japan―Less is More』です。

ポリファーマシーとは、多剤投与のこと。5~6種類以上の薬の処方には、副作用や相互作用の問題があるということ採り上げました。次は“Choosing Wisely”という、過剰医療に対する検証を科学的エビデンスとプロフェッショナリズムで検証していく国際的なキャンペーンで、私たちはこのキャンペーンの日本支部のような形で活動していたこともあり、主題としました。

今回、日本の高価値医療を採り上げた理由をお聞かせください。

前回の“Choosing Wisely”のコンテンツの中に“High Value Care”があり、継承した形です。医療の価値を高めるには高価値医療を推進して、低価値医療を減らした方が良いという考え方です。

最新の画期的な新薬や手術法は、どんどん高額化しています。価値の高い医療はどんどん進めるべきですが、限られた財源とリソースの中では、価値の低い医療は減らさないといけないということです。

High Value Careが高価格の医療、Low Value Careは低価格の医療というイメージで捉えてしまいますが…。

その逆です。高額でも効果が少ないものは価値がないのです。同じコストであれば、より効果の高いものを選択すべきで、同じ効果であれば、より安いものを選択すべきだということです。それが、価値の高い医療の選択ということになります。

本書のターゲットはどの層になりますか?

ターゲットは医師です。シリーズ全体でも同じですが、ある程度の経験を積んだ医師を対象として突っ込んだ議論を取り扱っていますので、指導医クラス以上になるでしょう。若い研修医や医学生には少し内容が難しいかもしれません。

ジェネラリスト教育コンソーシアムは、英題を“Japanese Consortium for General Medicine Teachers”としているように、経験を積んだドクター、中でも“General Medicine”、総合診療系の指導医に読んでもらいたいです。

ところで、先生はこのような指導医向けの書籍を編集する傍ら、研修医向けの書籍を出されたり、テレビにも出演されたりしていますよね?

それぞれの背景を持った人たちに合った教育を提供するという考えを実践しています。一般の患者さんや若い医師、指導医といろんな方向に向けて情報を発信するのです。

例えば、テレビではNHKの「総合診療医ドクターG」に出演し、マンガ形式の研修医向け医療本を発刊、ツイッターなどのSNSも利用し、ブログを2本、メルマガ、最近ではポッドキャストも始めました。

そのような広い情報発信を行うのは、どういうお考えからですか?

病院での診療もやりますけれども、これからは情報発信をメインにしようと考えています。自分自身で総合診療医学教育研究所を立ち上げたのも、総合診療を普及させたいからです。普及というのは医師の教育ですから、若い医師に総合診療に進んで欲しいという想いです。

お忙しい日常の中で、情報を伝えたい、という使命感はどこから来ているのですか?

それは、私がまだ十分じゃないと判断したからです。総合診療に対する理解が医療の世界でも一般の方の中でもまだまだ足りないのです。総合医療を進めた方が、より患者さんのためになると考えています。

胸にある、「闘魂祭」とは何ですか?

これは、毎年各地で行っている医療学生向けの勉強会で、レクチャーやワークショップなどいろんなメニューがあります。

最初は「闘魂外来」というものを立ち上げて、緊急外来の患者さんを医学生と一緒に診ると。一緒には診ますが、医学生を前面に出します。患者さんが来られたら断らずに、どんな症状、悩みでも真剣に聞くのです。

「闘魂」にはどういう意味が含まれているのですか?

自分自身との闘いです。
総合診療を目指そうとすると、いろんな壁にぶつかります。医学の世界にはまだ臓器別の専門医を目指した方が良いという風潮があり、強い信念がないと総合診療はできないのが現状です。

そして、勉強しなければならない範囲が広いのが総合診療の特徴でもあります。相当モチベーションが高くて、実行能力がないとできません。専門医ならば事前の紹介状などがあって予習ができますが、救急外来や初診外来に携わる総合診療は、事前情報がまったくなくて、いきなりその場で患者さんの診断をつけなければなりません。

「総合診療医ドクターG」が好評で、総合診療の認知度が上がったと聞きますが?

あの番組は、非常に高い効果があったと思います。以前は総合診療そのものが認知されていませんでしたし、一般の方にも、専門医に診て欲しいという人が多かったのです。
最近では総合診療の名前が徐々に浸透し始めて、総合診療で診てもらいたいという患者さんも出てきました。

総合診療に対するニーズが増えてきたのですね?

地域医療のカバーを総合診療に、というニーズが高まっています。地方自治体から医師派遣のリクエストが来た際に、守備範囲の広い総合診療科が最もフィットしているのです。私は守備範囲の広い“イチロー型”と呼んでいますが、そういう総合診療の医師がいた方が、効果的かつ効率的な医療が提供できて、価値の高い医療が可能となるのです。

最後に、本書を読んだ方々にメッセージをお願いします。

本書を手に取った方々には、おそらくある程度の経験を積んだ医師の方が多いと思いますが、それぞれの考えや意見を踏まえて、日常診療に活かしていただきたいです。

本書はガイドラインでもなければ、ルールブックでもありません。私たちの勉強会グループのメンバーが出した意見です。その意見に100%従う必要はありませんので、それぞれの医師が持っている医療行為についての価値に基づいて、この本を診療に役立てていただきたいです。

取材対象者:徳田 安春 様
取材場所:TKP上野ビジネスセンター
取材日時:2016年9月26日

紹介書籍:
『ジェネラリスト教育コンソーシアム vol.9
日本の高価値医療 High Value Care in Japan』
編集:徳田 安春
発行人:尾島 麗
発行所:尾島医学教育研究所
発行日:2016年4月25日第1版第1刷発行

著者プロフィール徳田 安春(とくだ やすはる)総合診療医学教育研究所CEO
1988年琉球大学医学部卒。沖縄県中部病院で臨床研修後、沖縄県立八重山病院、沖縄県立中部病院、聖路加国際病院、筑波大学付属水戸地域医療教育センター。現在はJCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構本部)本部総合診療顧問、筑波大学客員教授。総合診療医学教育研究所を立ち上げた。趣味は音楽。70~80年代のジャズ、ロックが好き。

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